鎌倉彫 寸松堂

 八百年の昔、その名を天下に掲げ、多数の名工が集まり、幾多の名品を創作し、鎌倉文化を創造した古都鎌倉は現代においても昔の面栄を古跡にとどめておりますが、その往古を伝えるものの一つに鎌倉彫があります。
 建保年間、三代将軍源実朝公が招いた宋の仏師、陳和郷が持ってきた彫彩漆「紅花緑葉」の香合の美しさは当時の工人達に大きな影響を与え、古来の木彫、漆芸技術に巧みに取り入れられ、独特の工芸品、鎌倉彫となり今日に伝えられております。鎌倉彫の刀法は古来の刀法を活かし、独特の漆塗り技術にて調和させ、伝統の堅牢さと風雅な気品を湛えております。
 鎌倉彫寸松堂は、幾多の名品を探求し、さらに新しい感覚と技術の研鑽を加えて、八百年来の伝統を生かさんと努力いたしております。鎌倉の心を込めた贈り物、弊店の鎌倉彫、一層の御賞愛を賜りたくお願い申し上げます。
                     鎌倉彫寸松堂当代当主 本藤良

sunshodo

店舗前景
    平成 4年 2月 9日:鎌倉市 景観重要建築物等 第4号指定
    平成18年10月9日:文化庁 登録有形文化財 指定



 寸松堂は、昭和十一年(1936)鎌倉彫作家を施主として建築された商店兼住宅です。寸松堂建築物の最大の特徴は頂部に相輪を載せた寄棟造りの三層の塔のすぐ脇に寺院建築でよく見られる入母屋造の屋根が取り付けてあり、また、武者窓と呼ばれる縦格子の窓があるなど、町屋の建物に寺院建築と城郭建築を合わせたようになっている点です。  構造も複雑で、一・二階を通した柱が少なく、上部の階が下の階の上に形状を変えて載っているような造りです。さらに、平面的に見ると凹凸があり、込み入った構成になっています。  内部は一階の正面側に広い土間の工房兼店舗をつくり、一階北側後方と二階に住居空間を設けています。一階の工房兼店舗の天井を格子状の格天井とし、床面はタイル貼りです。その上、古い商家に見られる小上りがあるなど、内装を優美に仕上げた施工者の手腕は、高い評価を受けています。  後ろには敷地内に離れ蔵が建てられるものの主屋やそれに付属する蔵などは、創建以来ほとんど改変された部分がなく、当初の姿をよくとどめています。
 寸松堂主屋は戦前の鎌倉地方の建築技術を伝える建築物として貴重であり、国土の歴史的景観に寄与するものとして、平成十八年、国登録有形文化財に登録されました。なお、平成四年に鎌倉市景観重要建築物の指定も受けています。
      注:私たちと文化財、256、国登録有形文化財、建造物(4)、一部改変引用。

      1. 鎌倉彫寸松堂・製作品目

茶托、手鏡類、銘々皿、盆類、菓子器、膳椀、硯箱、帯留、カフスボタン、ブローチ類、ステッキ等、各種の鎌倉彫を取り揃えております。また、ご注文に応じて各種品目を製作いたしておりますので、ご来店をお待ちいたしております。

店内展示懐石皿

木地は、桂材を主に使用しております。
塗りは、本漆(堅漆)を使用し、古来伝承技術と技法で製作しております。


ぐい呑

商品には、伝統工芸品マーク、シート付です。
「伝統工芸品マーク」は、通産大臣指定伝統的工芸品につけられます。



           鎌倉彫の歴史とその技法

1. 鎌倉彫の歴史
 1)鎌倉時代:禅宗寺院から生まれた鎌倉彫
13世紀半ばより、禅宗の移入に伴い宋から伝えられた美術工芸品の中に、堆朱と呼ばれる盆、大香合などの彫漆品がありました。それらは漆を幾重にも塗り重ねた面に精巧な文様を彫刻した、大変高価で貴重なものでした。これに影響を受けた仏師たちがその意匠をもとに、新たな木彫彩漆の仏具を作りはじめたのが鎌倉彫の始まりです。


 2)室町時代:公家と書院と鎌倉彫
室町時代にかけて、京都の南禅寺、知恩院、金蓮寺他、多くの寺院に伝えられる大香合や鎌倉国宝館の獅子牡丹文硯台など、また東北でも中尊寺、示現寺の椿文様の笈などの優品が生まれました。この時代の公家の日記「実隆公記」に「鎌倉物」という言葉が初めて現れ、以来、これら鎌倉ゆかりの木彫彩漆が一般的に鎌倉彫と呼ばれるようになったといわれています。



 3)江戸時代:茶道の一般化と鎌倉彫
江戸時代、茶道の普及とともに、茶入、香合、香盆が多く求められるようになりました。この頃は精緻な蒔絵が非常に発達を遂げましたが、一方、雅味のある鎌倉彫も人々に好まれ、元禄に出版された「萬寶全書」という茶道具の手引書にも「鎌倉彫」の名が見られます。そんな時代の中で、侘、寂など、江戸文化の香りを持つ鎌倉彫の作品も生み出されました。



 4)明治・大正時代そして現代:生活工芸品としての鎌倉彫
明治になると神仏分離令が公布され、続く廃仏毀釈運動によって仏師たちは仕事を失いました。これを転機に仏像制作から生活の中で使われる工芸品としての「鎌倉彫」に活路を見出しました。明治22年、横須賀線の開通とともに鎌倉は別荘地として栄え、訪れる人々への日用品やお土産として作られるようになり、現在の鎌倉彫へと発展して行きます。高度成長期を経て生活にゆとりが生まれた現代。大量生産の工業製品に対して手仕事の暖かさが求められ、鎌倉彫も多くの人に愛されるようになりました。
     注:以上は、伝統鎌倉彫事業協同組合資料・鎌倉彫、一部改変して引用。

以下は、鎌倉彫寸松堂二代佐藤泰岳(明治45年〜平成18年)の作品です。


丸額 翁文

牡丹文様飾り皿

根付 般若と翁

椎青 盛器

文箱 牡丹文 朱蒔塗

春日卓 鳳凰と菊文 透かし彫り

割れ蓋 香合

茶入れ

手鏡とループタイ



2. 鎌倉彫の技法と行程
 1)木づくり
材は、大径木の桂が最良とされ、製材、自然乾燥を経て、墨付け、カット後、ロクロで荒挽き、風通し、仕上げ挽きされる。この行程に1年から数年かかる。
 2) 多品目種の木地製品
盆、皿などの挽き物のほか、指物、刳物等の木工技術により、生活様式の多様化に合わせた、多品種の木地が作られる。
 3)絵付け
製品に合わせて文様の図案を作り、青竹という染料で薄い和紙に写し取り、軽く湿らせた生地に押し付け下絵を転写する。
 4) たち込み
写し取った下絵に沿って、小刀で切り込みを入れる。このたち込みの角度により、図の遠近感やボリュムなどを表現する。



 5) 際取り
立ち込んだ線の外側を、小刀または平刀で落とす。これにより、模様部分を浮き上がらせることができる。
 6) 刀痕
文様部分を各種の刀で肉付けし、地の部分には文様の彫と調和した刀痕をつける。意識的に地に彫跡を残すのは、鎌倉彫のひとつの特徴です。
 7) 木地固め
漆の木から採取したそのままの樹液を生漆と言い、この生漆を全面に塗り、しみ込ませて塗膜の基礎を作る。
 8) 蒔き下地
生漆を同じ厚さに塗り、炭粉または砥の粉を蒔き付け、乾いた後で研ぐ。これにより彫刻面の凹凸を十分に生かした滑らかな塗上がりになる。



 9) 中塗り
黒漆で中塗りを2回行う。彫の谷などに漆がたまらないように細心の注意を払い、さらに砥石やサンドペーパ、研炭などで研ぐ。
 10) 上塗り
透明度の高い透漆(くろめ漆)に朱色の顔料を混ぜ合わせた、上塗り漆を塗る。



 11) 乾口とり、マコモ蒔き
上塗り後、生乾きで表面が落ち着いたときを見はからい、マコモ粉を蒔き付ける。乾いた後、よく磨くと、全体に古色がかった落ち着いた色調になる。これが現代の鎌倉彫の代表的な塗の技法である。
 12) 摺漆
付着したマコモの状態を見ながら研ぎ出し、生漆を薄く全面に塗り付け、木綿の布でよく拭き取る。これを2から3回繰り返して完成です。
      注:以上は、伝統鎌倉彫事業協同組合資料・鎌倉彫、一部改変して引用。