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 ウィトゲンシュタインとレヴィナスは、20世紀の最も影響力を持った挑発的な思想家の二人である。それにもかかわらず、彼らの著作は対立する哲学的陣営から生まれたものとみなされている。その結果として、二人の哲学者の比較研究はほとんど行われてこなかった。本書は、これまで無視されてきたこれらの哲学者の間の類似性と緊張と、彼らを代表者とするしばしば敵対する知的な伝統を解明している。
 読者の方が一方を介して他方を深く理解できるようにと、倫理性についての二人の競合する哲学的な説明が並置された。二人の思想体系が、倫理学の議論における中心的な概念である信仰、罪悪感(責め)、傷つきやすさの領域において、相互に関連していることが明らかにされる。そしてその企てにおいて、驚くべき広範囲の共通性が見出されることが強調される。本書の中核部分は、宗教的信念と苦しむことについてのウィトゲンシュタインの成熟した思索と、倫理的責任についてのレヴィナスの特異的な説明の両者における多くの倫理的・宗教的テーマについての複雑ではあるが啓発的な相互交差に関するものである。

倫理的・宗教的思想

ウィトゲンシュタインとレヴィナス

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JANコード/ISBNコード:9784862512116

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目次

はじめに
謝辞
序論
第1章 平穏の思想:ピュロン主義とウィトゲンシュタインにおける治療としての哲学
第2章 世界像を信頼すること:『確実性の問題』以後の知識、信仰、倫理
第3章 多元主義、正義、傷つきやすさ:ウィトゲンシュタインの政治化
第4章 幕間:争いよりも平和を好む
第5章 報いなき悲惨さ:宗教、倫理、罪悪感(責め)についてのウィトゲンシュタインの見解
第6章 侵犯すること:ハイデッガーとレヴィナスにおける責めと犠牲、および日常的生
第7章 倫理学の非合理性:レヴィナスと責任の限界
第8章 汚染:レヴィナス、ウィトゲンシュタイン、デリダ
全体の要約
監訳者あとがき
参考文献
 人名・事項索引

前書きなど

 本書は、1997年から2001年にアバディーン大学で、ジョナサン・フライデー博士(Dr. Jonathan Friday)とイアン・マクラクラン博士(Dr. Ian Maclachlan)の指導のもとで執筆された私の学位論文の修正版であり、縮約版である。やや長くなるが、まず本書成立の事情について述べておきたい。私は1992年(広い意味で「分析的」タイプの)哲学を研究し始めたが、すぐに倫理学と宗教の哲学に関するウィトゲンシュタイン(Wittgenstein)の後期の著作の意義に没頭するようになった。そのあと1995年から1997年に、私は大学院で現代の「大陸」哲学を研究した。このような研究の道筋をとった理由はまったく状況に依存した偶然的なものであるが、私が初めてレヴィナス(Levinas)に出会ったのはこの頃である。彼の哲学への最初の反応は敵意以外のなにものでもなかったということについて、私は言い訳するつもりはない。それにもかかわらずエッセイ集やインタビューの通読をとおして、私は次第にレヴィナスの思想のある側面に心惹かれるようになった(読者はお気づきになると思われるが、私はレヴィナスの独特な作品にはまったく納得させられていない)。そのころの私のテューターの一部を狼狽させたことだが、この時期を通じて私のウィトゲンシュタインへの関心は依然存続していた。私が初めて『確実性の問題』―彼の著作の他のどれよりも私を夢中にさせ続けているテキスト―を読んだのはこの時期である。これらの研究のすべては、ウィトゲンシュタインとレヴィナスにおける宗教的護教論の問題についての修士論文となって結実した。1997年に私はこの作品をもとに学位論文作成作業に着手した。

版元から一言

 本書は、2005年にボブ・プラントにより執筆された「ウィトゲンシュタインとレヴィナス−倫理的・宗教的思想」の全訳です。
 ウィトゲンシュタインとレヴィナスという、20世紀の最も影響力を持った挑発的な思想家の二人について、これまで明らかにされてこなかった二人の思想体系が相互に関連していることについて解明しています。大陸哲学を研究する大学院生のみならず、現代神学に関心を有する人々にも役に立つ一冊となっています。

執筆者など

Bob Plant(ボブ プラント)

2001年にアバディーン大学(スコットランド)で哲学とフランス文学でPh.D.を取得した。最近では、「哲学と文学(Philosophy and Literature)」、「哲学研究(Philosophical  Investigations)」、「哲学と社会評論(Philosophy and Social Criticism)」、「宗教哲学の国際雑誌(International Journal for Philosophy of Religion)」、「現代神学(Modern Theology)」、「スコットランド哲学ジャーナル(Journal of Scottish Philosophy)」、「宗教倫理学ジャーナル(Journal of Religious Ethics)」に、「分析的」伝統と「大陸的」伝統の哲学者について多くの論文を発表した。

米澤 克夫(ヨネザワ カツオ)

元聖心女子大学文学部教授、現在放送大学非常勤講師
著書:『哲学思索と現実の世界』(共編著、創文社)、その他
訳書:P.M.S.ハッカー著『洞察と幻想―ウィトゲンシュタインの哲学観と経験の形而上学』(八千代出版)、M.ブンゲ著『精神の本性について』(共訳、産業図書)、C.V.ボースト編『心と脳は同一か』(共訳、北樹出版)、D.A.ワイナー『天才と才人―ウィトゲンシュタインへのショーペンハウアーの影響』(共訳、三和書籍)

寺中 平治(テラナカ ヘイジ)

聖心女子大学名誉教授
著書:『論理学』(共著、三和書籍)、その他
訳書:K.ブフタール・A.ヒュブナー共著『ウィトゲンシュタイン入門』(大修館書店)、S.シューメーカー、R. スウィンバーン共著『人格の同一性』(産業図書)、V.クラーフト著『ウィーン学団』(勁草書房)、D.A.ワイナー著『天才と才人―ウィトゲンシュタインへのショーペンハウアーの影響』(共訳、三和書籍)、G.E.ムア著『倫理学原理』(共訳 三和書籍)、その他

菅崎 香乃(スガサキ ヨシノ)

筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程在学
論文:「ウィトゲンシュタイン『哲学探究』一八五節における「われわれ」 ― 生徒の位置づけをめぐって」(『哲学思想論叢』(筑波大学哲学・思想学会)31号、2013年、15-27頁)、その他

河上 正秀(カワカミ ショウシュウ)

筑波大学名誉教授、元放送大学客員教授
著書:『ドイツにおけるキルケゴール思想の受容―20世紀初頭の批判哲学と実存哲学』(創文社)、『行為と意味―技術時代の人間像』(未知谷)、その他
訳書:マックス・シェーラー全集・第9巻『社会学および世界観学論集(上)』(白水社、共訳)、『キルケゴールの講話・遺稿集(第7巻)』(新地書房、共訳)、W・ヤンケ著『実存思想の軌跡』(富士書店、共訳)、その他

出雲 春明(イズモ シュンメイ)

植草学園大学、高崎健康福祉大学非常勤講師
論文:「誕生としての行為 ―アレントのアウグスティヌス解釈を手掛かりにして」(『倫理学年報』第57号、日本倫理学会)

馬場 智理(ババ トモミチ)

筑波大学非常勤講師
論文:「時間と他者−キルケゴール思想における実存解釈の研究」(学位論文:筑波大学)、その他