本書は、東洋医学の本質を伝統医学の古典中の古典である『黄帝内経』を通して理解するために叙述されました。
 本書では、漢方医学と中医学の融合を試みています。漢方医学は中国の伝統医学を起源としていますが、日本独自に発展した伝統医学といえます。その爆発的な独自性は、江戸時代中期に生まれたとされています。中医学の特徴でもある理論重視による治療が功を奏しなかったことが一つの理由とされており、複雑な理論を排除し、診察者の直感で患者の具体的な症状・症候を取捨選択して、治療法を決定するものです。方証相対、随証治療などと呼ばれています。一方、中医学では理論が確立しており、診断治療体系を弁証論治と表現しています。しかし、その体系化は複雑で統一的視点が欠如しています。このように、両医学には一長一短があり、その長所を活かし、短所を排除することで、よりよい伝統医学が確立していくのではないかと愚案しています。
 本書は、東洋医学全般を理解することを前提としながらも、『黄帝内経』を学ぶことに比重を高くした内容となっています。

東洋医学序説

温故定礎

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JANコード/ISBNコード:9784862512000

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目次

1.歴史
 1.1 中国における歴史
 1.2 日本における歴史
2.基礎理論
 2.1 基本的特質
 2.2 陰陽論
 2.3 五行論
3.解剖生理学
 3.1 気血津液精
 3.2 藏府
 3.3 経絡
 3.4 〓穴
4.病理学
 4.1 八綱分類
 4.2 気血津液精の異常
 4.3 藏府の異常
 4.4 経絡〓穴の異常
 4.5 急性外感病
5.病因病機学
 5.1 病因学
 5.2 病機学
6.診断学
 6.1 四診
 6.2 総合診断学
7.症候病態学
 7.1 症候学
 7.2 病態学
8.治療養生学
 8.1 治療学総論
 8.2 刺法
 8.3 灸法
 8.4 抜火罐法
 8.5 鍼灸治療学
 8.6 生薬方剤学
 8.7 薬物治療学
 8.8 総合治療学
 8.9 養生学
9.診療科特性
 9.1 婦人科学
 9.2 小児科学
 9.3 老年科学
10.応用医学関連
 10.1 天文気象
 10.2 運気論
 10.3 易学
参考文献
索引

前書きなど

 東洋医学が注目されているが、その根本的な理解はなされているのであろうか。全人的医療の重要性、西洋医学的治療の限界、医療経済的問題が取り上げられ、その解決の糸口として東洋医学を含めた伝統医学が登場している。漢方、鍼灸治療の有効性も報告されている。しかし、漢方処方、鍼灸施術に関する運用法が脚光を浴びているのみではないだろうか。このような伝統医学の本質を把握するための環境は整っていないと感じられる。
 『温故定礎 東洋医学序説』は、東洋医学の本質を伝統医学の古典中の古典である『黄帝内経』を通して理解するために叙述された。古典は漢文で記述されており、現代人には親しみ難い存在である。しかし、本書を通して、古典に触れる機会が高まることを切望する。本書の説明文中に、『黄帝内経』の引用部を示してあるので、原典の記載を確認しつつ、古典に親しんでもらいたい。なお、東洋医学は、アジア地域で生まれた伝統医学を指すが、通常、東アジアにおける伝統医学として認識されることが多く、本書でも同様に定義する。また、伝統医学とは、多様な文化的背景に根ざす風土固有の規範、信念、経験にもとづく知識、技能および実践法が集約されたもので、その体系根拠が実証可能であるかによらず、人々の健康維持とともに、身体的・精神的不健全を予防、診断、改善あるいは治療する手段として利用されてきたものである。東洋医学の中には主に、中国の中医学、韓国の韓医学、日本の漢方医学が含まれることになる。
 本書では、漢方医学と中医学の融合を試みた。漢方医学は中国の伝統医学を起源とするが、日本独自に発展した伝統医学といえる。その爆発的な独自性は、江戸時代中期に生まれたとされている。中医学の特徴でもある理論重視による治療が功を奏しなかったことが一つの理由とされており、複雑な理論を排除し、診察者の直感で患者の具体的な症状・症候を取捨選択して、治療法を決定するものである。方証相対、随証治療などと呼ばれている。一方、中医学では理論が確立しており、診断治療体系を弁証論治と表現する。しかし、その体系化は複雑で統一的視点が欠如している。このように、両医学には一長一短があり、その長所を活かし、短所を排除することで、よりよい伝統医学が確立していくのではないかと愚案している。 伝統医学は、古典の記載、古人の主義主張に固執するものではなく、これらを咀嚼して時代あるいは環境などに適合、発展させていくべきものである。そのためには、古典を理解することは必要不可欠となる。また、両医学も各々に、あるレベルで完成されているのかもしれないが、立ち止まるべきものでもない。本書が、両医学の発展に寄与することを願ってやまない。

版元から一言

 本書は『黄帝内経』を通して東洋医学を理解することを目的としています。
 本書では、『黄帝内経』の内容を網羅し、その引用箇所を明確にしています。本書、『随訓釈訳 黄帝内経素問序説』、『随訓釈訳 黄帝内経霊枢序説』を三位一体として、縦横に駆使活用していただければ幸いです。本書を通して、古典に触れる機会が高まることを願っています。

執筆者など

西村 甲(ニシムラ コウ)

昭和62年 東京医科大学 卒業
昭和62年 慶應義塾大学医学部小児科研修医
浜松赤十字病院小児科部長、慶應義塾大学医学部小児科専任講師などを経て
平成17年 慶應義塾大学医学部漢方医学講座講師
平成22年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部教授
平成28年 鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所所長

専門医
小児科専門医 小児神経専門医 漢方専門医

指導医
漢方指導医