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フライトジャケット・ヒストリー♪
アメリカ陸軍航空隊から独立したアメリカ空軍
第1章



初期のフライトジャケット
フライトジャケットは衣類としては、比較的歴史の浅い部類だ。フライトジャケットが誕生したのは飛行機の登場で必要性が生じたのが理由だが、未知の分野でもあり、飛行服に必要な要件も明確ではない。このため初期の飛行服はモーターサイクリストや極地探検家が着用した衣類のデザインが流用されている。やがて、1941年に第一次大戦が勃発。飛行機が兵器として大量使用されたことで、フライトジャケットもそのスタイルを確立していく。 第一次大戦が勃発した当時、アメリカ陸軍の飛行士が着用していたのは通常の服であり、その上から飛行帽と手袋を着用するのが普通だった。しかし当時の制服は立襟で、見張りのため頻繁に首を動かすと擦過傷を負う始末だった。このためフランスで戦った飛行士たちはイギリス軍の制服に似た開襟の制服を仕立てさせ、これを着用している。これはアメリカ陸軍上層部の無知に由来するもので、「飛行機は馬と同様のもの」という思想が支配的だったことが理由とも言う。
アメリカ陸軍航空隊(アメリカ軍では空軍が独立するのは1947年で、それまでは陸軍所属だった。)が本格的なフライトジャケットを採用した時期は不明だが、1917年8月制定の特別規定42号で定めたものが最初のものと想像される。このジャケットはレザー・エビエーター・コートと呼ばれる丈の長いダブル前のゆったりとしたジャケットで、裏側には厚いウールが張られていた。ただ当時の写真を見ると、このフライトジャケットを着用した例は多くなく、中には部隊単位で購入したらしい革製のジャケットを着た例も確認できる。また、内側に毛皮を張ったコットン製のシコット(Sidcot)スーツも広く着用されたが、このスーツはイギリス空軍飛行士のシドニー・コットンが個人的に仕立てたものがルーツで、それが軍用として採用された経緯を持っていた。

大戦間のフライトジャケット
第一次大戦でその可能性を証明した飛行機だったが、戦後は軍備縮小と1929年に始まった世界恐慌によって制限を受けることとなった。このためフライトジャケットを始めとする航空装備の開発も予算上の制約を受けたが、それでもより優れた装備開発の努力は続けられている。航空装備開発のためのプロジェクトは第一次大戦当時からスタートしており、連合軍や捕獲したドイツ軍装備のテストが行われていた。ただし、それら研究の成果は戦争中には活かされることがなかったのは言うまでもない。
アメリカ陸軍の航空装備開発のための機関はオハイオ州のライト・フィールド(現 ライト・パターソン基地)に置かれ、第二次大戦までにそのシステムを確立していく。装備の開発には大学や企業等の民間組織も参加しており文字通り様々な方向から新型装備開発のためのアプローチがなされている。
大戦間にフライトジャケット開発の重点が置かれたのは冬期用のもので、その使用素材のを巡り様々な試行錯誤が繰り返された。第一次大戦中には防寒用の電熱服も開発されたが、当時の電熱服は信頼性に欠ける致命的欠陥があったため、冬期用フライトジャケットには毛皮を使用せざるを得なかった。
フライトジャケット開発に際して問題となったのは国内で良質な毛皮の入手が困難なことで、様々な動物の毛皮がテストされることになる。そして最終的に選ばれたのが羊皮であり、この素材が第二次大戦の1944年まで使用され続けることになる。

革製フライトジャケットの完成
また各種航空装備開発が本格化したことによって、そのデザインにも変化が生じるようになっていく。それまでの飛行服はオーバーオール式のものが主流だったが、これらフライングスーツは「サイズ合わせ」が困難であり、補給面でも大きな問題を抱えていた。これによってジャケットとトラウザーズ(ズボン)から成るツーピースの装備開発が促されることとなり、1934年5月には最初のツーピースの羊皮スーツとしてB-3ウインター・フライングジャケットとA-3ウインター・フライング・トラウザーズが採用された。
こうして冬期用の飛行服はツーピースが主流となり、ジャケットとトラウザーズの組み合わせが第二次大戦と戦後を通じて開発されることとなる。また一方で飛行機の発達は冬期用飛行服の開発にも大きな影響を与えている。従来飛行機のコクピットは剥き出しで、パイロットは文字通り「吹きさらし」の状態だった。このため顔面を保護するための装備としてフェイス・マスクも開発されている。
しかし、1930年代に入って密閉式のコクピットが導入されるようになると、パイロットが直接外気にさらされることはなくなった。
これによって、重くかさ張る冬期用ジャケットを軽量化が可能となり、1939年6月にはB-6ウインター・フライング・ジャケットとA-6ウインター・フライング・トラウザーズが採用されている。ただし、飛行機のコクピット内が与圧されたり空調装置が装備されるのは1940年代後半に入ってからで、密閉式コクピットの登場で冬期用のジャケットの要件である「寒さからの保護」の問題が解消されたわけではない。
冬期用飛行服の開発に際しては羊皮以外の素材も検討されており、実際に開発されたものには
(1)革ジャケットの内側にウールを張ったもの。(2)布ジャケットの内側に羊皮を張ったもの。(3)布ジャケットの内側にパイル添毛を張ったもの、等のバリエーションが存在していた。
これら素材を使用したフライングスーツ及びフライトジャケットは1920年〜 1930年代に開発されたが、その全てが短期間で限定採用アイテムとなっている。だが、これら素材の組み合わせの中で
(3)のパイル素材を使用したものは第二次大戦中に再度注目され、その後のフライトジャケットに大きな影響を与えることになる。
一方夏期用のフライトジャケットだが、その開発は冬期用に比べると遅れたものとなっていた。これは夏期にはオーバーオール式のフライングスーツを着用するのが一般的だったためである。前述した第一次大戦当時のレザー・コートは夏期用のフライトジャケットに相当するアイテムだったが、1920年代に廃止されていた。ただし、夏期用フライトジャケットが完全に廃止されたわけではなく、その研究開発は1923年に始まっている。

夏期用フライトジャケットが復活するのは1927年のことで、A-1サマー・フライング・ジャケットがその最初のものとなった。このジャケットはオリーブ・グリーンに染められた革で作られ、内張りには着用時の「滑り」をよくするためにコットン・サテンが使用されていた。このA-1は襟と袖口にニットを使用し、体にフィットするデザインになっているなどコクピット内部での動きやすさを考慮したものとなっていた。
ちなみにA-1ジャケットの正面がボタン止めになっているのは採用当時にファスナーが一般的ではなかった(発明されたのは1891年)のが理由で、別に特別な意味があったわけではない。A-1の後継モデルであるA-2の採用が1930年と比較的接近しているのは、案外ファスナーと関係があるかもしれないが、実際のところは判然としない。ともあれ1930年代末までにアメリカ陸軍航空隊はその基本となるフライトジャケットを完成させ、第二次大戦へと突入していく。

バックペイント(男の背中は戦争キャンバスだ!)
第二次大戦中に陸軍航空隊ではフライトジャケットにバック・ペイントを始めとする装飾を施すことが一般的に行われていた。写真(上左)のA-2にも左胸に部隊章、右胸に出撃回数を示す革製の爆弾マークを付けている。写真(上右)のように、レザージャケットの背中は、バーカスが描いたようなセクシーな女性を描くキャンバスか、撃墜した敵機の数を記録するログブックになった。「殺人社会」と物騒な絵を描いたA-2ジャケットを着たまま捕虜となり、敵のプロパガンタに利用された例もある!
アメリカ陸軍航空隊のフライトジャケットを語る時、無視できないのがバックペイントだ。バックペイントは飛行機に描かれたノーズアートと共に第二次大戦中のアメリカ兵の文化の象徴であり、現存する当時のジャケットは高値で取引されている。 バックペイントもまたノーズアートと同様に自然発生的なもので、そのモチーフは愛機やそのノーズアート、さらには女性やマンガと実に多岐にわたっていた。特に女性のイラストは当時の人気雑誌エスクァイアに掲載されたアルベルト・バーカスのピンナップの模写が一般的だった。これらバックペイントは画才のある地上整備員によって描かれるのが一般的で、人気のあるアーティストの中にはアシスタントを抱えてパイロットたちのオーダーに対処した者も存在している。またパイロットで画才のある者などは自分でバックペイントを描いたという。 またジャケット正面には部隊章が付けられたが、これはジャケットに直接描いたものと、革パッチを縫い付けたものの2種類が存在している。航空隊の装備には部隊章用として直径5インチ約13cmの革製パッチが採用されているが、実際には手近にある革の切れ端を使用するのが一般的だった。これら部隊章は通常左胸に着用されたが、中には自分が所属する飛行隊スコードロンと、その親部隊である航空群グループの部隊章を両胸に付けた例もある。
また、バックペイントの一種としてはCBI中国・ビルマ・インド戦域で使用されたブラッドチットが存在するが、不時着したパイロットが現地人に援助を求めるために使われる一種のサバイバル装備だった。ブラッドチットは中国政府が発行した布製のもので、中華民国の国旗と援助に対して褒賞を与える旨の文句が印刷されていた。これらブラッドチットはさほど役に立たなかったとも言われるが、エキゾチックなデザインから人気を呼び、インドで作られた模造品をファッションとしてフライトジャケットの背中に縫い付けることが広く行われている。



第2章へ続く・・・!


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